14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
「お疲れ」

「お疲れさまです。帰りも運転すみません。免許持っていたら、運転を変わりたい気持ちですが……。あ、持っていたとしても高級外車の運転はきっと怖いかと」

 私、何を言っているんだろう。

 見えるところにベッドがあって、ドキドキしているせいだ。

「俺のこと、気遣ってくれるんだ。それなら泊ってく?」

「え……? い、いいえ」

 頭の中が真っ白になって、とっさに頭を振りつつ「いいえ」と言っていた。

「手は出さないと言ったら?」

 本当に……?

「不信感ありありの顔をしている。セクハラされて、心に傷を負った君を襲おうなんて思っていない」

 大和さんは信じられる。でも……。

「食事が終わるまで返事はいいよ。帰る選択をしてもかまわない」

 ちゃんと逃げ道まで考えてくれる彼に、すぐに返事が出来ずに申し訳ないと思いながら頷く。

「はい。考えさせてください」

「OK。食べよう。鍋が出来上がったようだ」

 彼はグラスをゴクゴクと喉に流してから、お造りに手を伸ばした。

 彩の良い煮物を食べながら、彼の提案を考えていた。

 部屋は広いし、エッチが目的じゃない。泊まろうかと大和さんが言ったのは、温泉に浸かって彼が思ったより疲れているからなのかもしれない。

「大和さん」

「ん?」

 鍋から取り皿に入れていた彼が手を止める。

「泊まってもいいですよ。お布団は別々の条件で。また露天風呂に入ってもいいかなって思って」

「わかった。じゃあ、ここでゆっくりしよう」

 大和さんは麗しい笑みを浮かべる。

 その笑みに心臓がドクドク暴れ始めてくる。
 別々の部屋であっても、彼を意識してしまって眠れるかわからない。
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