14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
 「あ! 兄さん、帰っていたんだ。おかえりなさい」

 中学一年生で私立の中高一貫校に通っている弟、寛人が帰宅した。

「ただいま。遅かったな」

 先に食べた夕食後、ソファに座りスマホをいじっていたところだ。

「うん。今日は部活だったんだ。兄さんは何見ているの?」

 彼は運動部より文化部のタイプで、鉄道研究部に所属している。

 隣に座った寛人にスマホを覗き込まれるが、別に見られて困るものを見ているわけではないので見せる。

「山梨の観光地……? 兄さん、行くの? 良いなぁ」

 寛人は幼い頃からシングルマザーだった俺と違い、両親の愛情をたくさん受け、幼い印象を受ける。

 あの頃、母から大事にされていたが、努力せずとも勉強や運動が人並み以上だった俺は人生をなめてひねくれて生きていた。
母が忽那氏と再婚してからは、彼は実の父親のように接してくれた。

 そのおかげで徐々におおらかで率先力のある忽那氏を尊敬しはじめ、物事に興味を持つようになり俺は変わっていった。

「電車に乗って行きたいよ」

「父さんたちに連れて行ってもらえよ」

「えー、兄さんと行きたいのに」

 そこへトレイにコーヒーを乗せた母が現れる。

「寛人、大和は忙しいのよ。無理を言わないの。コーヒーここに置くわよ」

「兄さん、山梨に行くんだって」

「そうなの? あ、寛人。手洗いを済ませたの?」

 寛人は「まだ」と言いながら、渋々その場を離れ洗面所へ向かう。

「大和、彼女さんと山梨へ出掛けるの?」

「ん? ああ……ドライブを」

「それなら夕食は河口湖近くの会員制ホテルがお勧めよ。露天風呂もいいし、食事も最高よ」

 母は会員制ホテルの名前を言うと、キッチンへ戻って行った。
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