14年分の想いで、極上一途な御曹司は私を囲い愛でる
十月の中旬の金曜日、出張中に溜まった仕事を片付け、ようやく紬希に連絡を入れられた。
人生の約半分をニューヨークで生活していたから、観光地を良く知らない。ウェブで入念に調べてからのドライブに誘った。
いつも唐突に誘うが、彼女は本当に予定を入れていないのだろう。返事はOKだった。
前回紬希が選んだ服を着て支度を済ませ、七時に家を出て車を走らせた。
驚くことに紬希はおにぎりを作ってきた。いっきに中学の頃が思い出された。
勉強を教えてくれたお礼だと言って、作ってきてくれたおにぎりはコンビニのよりもおいしかったのを今でも覚えている。
土曜日の行楽日和で高速道路は混んでおり、着くまで他愛のない会話を楽しんだ。
今日の彼女は黒縁眼鏡をかけていない。しかも俺と同じく前回のレモンイエローのワンピースを身に着けている。
俺に心を許し始めている?
黒縁眼鏡をかけていないことを口にしたのは、スワンボートに乗ってからだった。
彼女はあまのじゃくのようなところが少しあるから、しょっぱなに指摘するは躊躇われたのだ。
ふたりでいるときは眼鏡をかけなくても安心と聞いて、この際思い切って理由を尋ねた。
何か深い事情があるのかもしれない。聞けば傷口が開いてしまうかもしれないと思いつつ、聞くことを止められなかった。
ゆっくりスワンボートを漕ぎながら、紬希は理由を口にした。