ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第17話 ミッションと天井裏とインポッシブルと

 七月三十日 午前一時五分

 私は今、とある建物の天井裏に潜んでいる。

 この任務は今日で十五回目だが、毎回ペアを組む男がいる。
 その男の身長は一メートル七十センチ、服を着ていれば中肉中背に見えるが体脂肪率は十パーセント台。日焼けした肌、短髪でもみあげは長め。目が細くて奥二重、濃い眉毛で薄い唇。
 街に溶け込んでしまう特徴の無いその男は、松永さんの同期で中山(なかやま)(りく)さんだ。私の隣にいる。
 四年前に松永さんから中山さんを紹介されて挨拶した際、中山さんは開口一番、「もちろん仮名だよ」と白い歯を見せて笑った。

 五年前に松永さんと初めて会い、松永さんの仕事の内容を知った時、そんな事は警察がやる事じゃないだろうと思った。
 そして中山さんはペアを組むのに、命を預けるのに、同業の私へ仮名だと言った。私は愕然とした。

 中山さんと初めて会った日から六週間、私はマンションの一室に監禁状態にされた。そこで体を絞るトレーニングと、任務に必要な事を教え込まれた。

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