ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 いつも任務が終わると気力体力を使い果たし、最後に集中力が途切れた瞬間に私は倒れる。それを松永さんは肩に担いで移動させる。
 今回は体を絞り切れず、重かったと言われた。

「一般的には細い……細過ぎるけど、ね?」
「すいませんでした」
「何で出来なかった? 今後の参考にするから何でも言って」
「うーん……三十歳を過ぎて、脂肪が付くようになったんです」

 食べる量で調整出来るかと思っていたが上手くいかない。
 後任を育てる事は二年前に実行したが該当者がいなかった。いなかったというより、私が目を付けてスカウトすると二ヶ月以内に妊娠が発覚してそれどころじゃなくなったのだ。
 五人連続して妊娠が発覚した時、松永さんは「少子化に貢献してるね」と言って、鬼子母神奈緒の称号を与えられたが、当初の目的は達成出来なかった。

「ババアになった、という事です」
「ふふふっ……熟女だ」
「んふっ」

 熟女と聞いて私はふと思い出した。
 松永さんとスペインバルの店内に入った際、私が腕にしがみついたままでいた事を嫌そうにしていた事を。

「あの、私が腕にしがみついたのは嫌でしたか?」
「ん? あー、あれか。ふふっ、嫌じゃないよ」

 松永さんは、胸が当たっていた事に居心地の悪さを感じていたという。普段、松永さんは私にパンツ見せてとかストッキング破きたいとか土下座するからケツ揉ませてとか碌でもない事を言うが、胸については何も言わない事を不思議に思っていた。松永さんは脚フェチなのだと思っていた。

「だってさ、奈緒ちゃんのおっぱいが大きくて柔らかくてさ、そんな風に思ってなかったから、何となく、離れたくて」
「そうでしたか」

 その時、松永さんが振り向いて暗闇にタンクトップだけが浮かび上がった。
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