ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 葉梨の相澤を見る目は優しいな、私はそう思って二人を見ていたが、岡島は私の背後に回りながら独特な発声法で言葉を発した。

「葉梨を仕込め」

 岡島はそう言うと、相澤と葉梨に居酒屋へ向かうと声を掛けた。
 私は岡島の隣で話の続きを聞いた。
 後ろにいる二人には岡島の声は聞こえない。私が独り言を言っているように聞こえるだろう。

「奈緒ちゃんが葉梨を仕込むのが良いと思う」
「なんで」
「俺とか他の奴だと良くない」
「はー?」
「とにかくお願い」
「えー」
「とりあえず今日は葉梨を観察して」

 詳細を言わない岡島に腹が立った私は手の甲で岡島の頬を叩いた。

「痛っ!!」
「わっ! 奈緒ちゃんどうしたの?」
「なんかムカついたから」

 振り向くと相澤は困った顔をしていたが、私が岡島を叩くのは毎度の事だから驚く必要も無いだろうと思う。だが隣の葉梨を見上げると恐怖の面持ちで私を見ていたから、私は言った。

「葉梨、大丈夫だよ、私はグーパンしないからさ」

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