ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 八月四日 午前五時五十一分

 目が覚めると、また私は中山さんの腕の中にいた。
 知らぬ間に忍び込み、私のベッドに入っているのはいつもの事だ。そしてもう一つ、これからいつもの事が起きる。

 中山さんの背中越しに松永さんがいて、松永さんが中山さんの頭を引っ叩いたら松永さんの勝ちなのだが、今回は六連敗中だ。
 松永さんが連敗しているという事は、私が松永さんに引っ叩かれているという事でもある。中山さんは私を盾にして逃げるから。

「痛いっ!!」
「あっ!!」
「バーカバーカ!」

 ――この遊び、そろそろやめてくれないかな。

 私はベッドを抜け出すと、松永さんと目が合った。
 松永さんは悔しそうな顔をしていたが、私は気づかないふりをした。

「おはようございます。コーヒー淹れましょうか?」
「……俺が淹れます」
「俺も飲みたーい!」
「バーカバーカ!」

 朝っぱらから元気だな。私はそう思った。

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