ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 葉梨は簀巻きのままの私をベッドに寝かせ、掛布団をかけてくれた。だがこのまま簀巻きだと身動きが取れないからどうしようかと悩んだ。

「葉梨、取り出して」
「んっ!?」
「えっと、布団、取って、かな?」
「……ああっ! はい!」

 ――通じたようだ。

 葉梨は上に掛けた掛布団を外し、簀巻きにした羽毛布団の端を掴むと勢いよく引っ張った。
 回転する私はそのままベッドの下に転げ落ちた。

 ――どうしてこうなった。

 もう少しこう、手心を加えるとか、葉梨には出来なかったのだろうかと思ったが、駆け寄って焦る顔をした葉梨に私は何も言えなかった。

「加藤さん! 大丈夫ですか!? すみませんでした! 本当に申し訳ございませんでした!」

 起き上がろうとしたが、肩を打ってしまったようで起き上がれない。少し鈍い痛みを感じた。

「ごめん、痛い。手を貸して」

 謝罪しながら私を抱える葉梨に申し訳ないなと思ったが、私はある事に気づいた。

 ――香水が変わった。

 この香りはいつもの香水のトップノートなのだろうか。ミドルノートとラストノートならいつもの香水だと分かるのだが、香水を纏ってすぐのトップノートを私は知らない。

「ねえ、香水、つけたばっかなの?」

 私の背中と脚から腕を抜いている葉梨を見上げながら尋ねると、葉梨は五時間以上経過していると言う。

「いつもの香水?」

 葉梨の目が、少し曇った。
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