ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 後日、岡島からも怒られた。
 山野の一件で、松永さんの指示で岡島が流した噂話は事実と全く逆だった。
 松永さんが山野に執心で、深夜の署内で山野が襲われそうになった所を私が助けた、と。私が松永さんをボッコボコにした、と。

 松永さんは山野を守る為に泥を被った。同業には絶対に手を出さないはずの松永さんだが、山野は可愛いから無理もないだろうと皆納得した。
 そして私は山野を貶めようとした罰として狂犬の確固たる地位を築いた。
 松永さんをボッコボコにするのは無理じゃないかと思ったが、狂犬の親玉の玲緒奈さんには葉梨と制服二人を公衆の面前でグーパンして鼻血ブーの実績がある以上、舎弟の加藤奈緒ならやりかねないと誰もが信じたのだ。酷い。

 岡島は、噂話の伝達経路から職員の交友関係を調べる役割を担っている。
 狭い警察組織は噂話の拡がりが速い。ならば隠したい事実に九十九パーセントの嘘を混ぜて流せば良い。
 岡島は混ぜる嘘を人によって変えている。そこでまた新しい交友関係を掴む事も出来るからだ。

 岡島は、山野がセフレでも良いと松永さんに伝えた事がバレたら、山野はこの先ずっとそういう扱いを受ける事になると私を(たしな)めた。

「奈緒ちゃん、俺、どうすればいい?」
「うーん……」
「俺は嫌なんだよ」

 山野は松永さんの件があった後に異動している。
 仕事も勉強もしっかりやっているという事実はあるものの、複数人から男関係に問題があると聞いている。

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