ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私は松永さんのセクハラにはパワハラで返すが、須藤さんのパワハラには何も出来ない。
 上司だから出来ないのではない。須藤さんからはパワハラで返して良いと許可は出ているし、むしろ返せと言われている。だが管理職になった今でも中山陸さん並に鍛えている須藤さんにパワハラを返すのは至難の技だった。だから私はまだ一度も須藤さんにパワハラを返せた事が無い。

 裏拳や手の甲でフルスイングは躱されるか手のひらで受けるし、松永さんに教わった肘鉄は肩関節を外されそうになった。もうこの際だからグーパンしようかと思った時は肘に手刀されて返り討ちに遭った。セルフグーパン――。

 中山さんと同じような背格好で体脂肪率十パーセント台の須藤さんに敵うわけがないのだ。だから私は、いつか膝カックンしようと心に決めている。

「刑事課の課員の前で謝罪はします?」
「うん。あとさ……」

 須藤さんも今日は休みだから、刑事課で謝罪パフォーマンスをした後は一緒に出掛けて欲しいと言う。

「どこにですか?」
「デパート」
「私もパパ活してると思われるから嫌です」
「お前だと同伴出勤じゃないの?」
「同伴出勤」

 言われてみれば確かにそうだ。パパ活女子は若い女の子――。

 須藤さんは食事を奢ってくれると言う。
 仕方ない。面倒だがデパートについて行く事にしよう。

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