ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 小さなパフェグラスに入った生クリームにバナナやフレークを乗せてチョコレートを掛けようとした時だった。ちらりと二人を見ると、ブラウニーを食べ終わり所在無さげに座っていた。

 ――設定も、私が離席したら無意味。

 あの二人はそれに気づいてなかったのだ。
 私はほくそ笑みながらもう一つパフェを作っていると、視界の端に相澤がいた。

 ――デートか?

 席に着いた相澤の後ろに小さくて可愛い女の子がいた。駅で葉梨に紹介していた女の子だ。マズい。早く席に戻らなくては。

 その時だった。
 いつの間にか隣にいた松永さんが私の耳元で囁いた。

「少し、我慢して」

 そう言って松永さんは相澤と彼女の席に行き、無理矢理相澤の彼女の隣に座った。何か話しているようだが会話の内容は聞こえない。私は席に戻り、岡島にチョコバナナパフェを渡した。

「奈緒ちゃん、松永さんは相澤を邪魔してくるって言って行っちゃった」

 松永さんはデートの妨害をしている。
 これまでずっと、松永さんは相澤に彼女が出来るとデートの妨害をしていると言っていた。
 今日、ここに相澤がいるのは想定外だったのだろう。

 こちらに背を向ける松永さんを目を細めて見つめる相澤――。
 たまに松永さんからどうにかしろと言われる。だが私は何も出来ない。怖いのだ。だから今の関係で良いと思っている。
 松永さんはそんな私の気持ちを尊重してくれているから、相澤の彼女を私に見えないようにしているのだ。本当に申し訳無いと思うが、相澤を失う事が怖い。

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