ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 地下鉄の改札を抜けて階段を降りようとした時、私は振り返った。
 葉梨は直立不動で私を見ている。

 ――本当にお洒落な熊だ。

 私は葉梨へ手を振って、微笑んだ。気づいた葉梨も手を振っている。

 ――楽しかったな。

 私は葉梨がいい男なのだと知り、嬉しかった。私はいい男に口説かれたのだ。だから私はいい女だ。

 ネットで見た恋愛コラムに『いい女だと思わせてくれる男がいい男』だとあった。ならばこれ以上の素敵なプレゼントは無いだろう。自分はいい女だと、そう思わせてくれた葉梨には感謝しなくてはならない。

 もう一度振り返り、手を振って、私は階段を降りた。

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