ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 父からは毎日メッセージアプリでスタンプが送られて来る。父はそれに既読が付くと安心するようだ。まるで生存確認――。
 警察官になると言った時、猛反対した父は十四年も経つと生存さえ確認出来れば良いレベルにまでなっていた。

「三月一日はどうかな?」
「はい! 空けておきます!」

 その時だった。電話の向こうで犬の鳴き声がした。キャンキャンと耳をつんざくような小型犬の鳴き声だ。葉梨のアイコンの可愛い犬だろうか。

「犬、飼ってるの?」
「はい! ちょっと移動します!」

 そう言った葉梨は別室に行ったのであろう。ドアを閉めた音がして、犬の鳴き声は小さくなった。

「騒がしくてすみませんでした。最近もう一頭飼い始めてケンカしてるんです」
「犬の種類は?」
「二頭ともポメラニアンです」
「モメラニアン」

 私はポメラニアンが揉めているのならばモメラニアンだ、んふっ、と考えてそのままを口にした。だがそれを聞いた後輩は今、無言だ。

 ――お父さん、ウケなかったよ。
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