ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 午後十一時三十五分

 私は今、家に帰って来た。

 白い薔薇の意味を検索したかったが、必死に耐えた。耐えたというか、カバンに花束を入れられず、両手が塞がっていたから検索出来なかった。だから検索してみよう。そう思った。

 白い薔薇、五本、意味――。

 検索したものの、やはりあのババアが言った通りだ。別の意味はある。だが別の意味どころか意味がたくさんあり過ぎる――。

 葉梨は白い薔薇の意味だけを言っていた。『心からの尊敬』だと。

 私は葉梨から口説かれた事に嫌悪してキレたのではないのだ。
 岡島から、『葉梨は奈緒ちゃんを女として見ない』と言われ、その通り葉梨はずっと先輩として私を見ていた。だから変わってしまった葉梨にムカついたのだ。

 葉梨は昨夏に恋人と別れたと言っていた。
 なぜ、今なのだろうか。

『俺の誕生日も一緒に過ごしてくれますか?』

 葉梨は私を口説けると、いけると思っていたのだろう。誕生日当日の夜に会う男が葉梨で良いと私が言ったのだから。そう思うのも無理もない。口説ける自信があったからホテルで食事だったのだろう。

 という事は、葉梨はもっと前にサインを送っていたはずだ。そして私が承諾のサインを返していたのだろう。

 ――カフェの白い薔薇か。

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