ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 あれは一周年記念のプレゼントと言っていたが、葉梨が手配したものだったのかも知れない。

 そもそも薔薇は、クリスマスに須藤さんの恋人へ渡す薔薇の本数を葉梨に決めてもらった時から始まっている。
 私は、『相手は自分に悪い印象は持っていない女性に渡す薔薇の本数』を決めてもらった。私が葉梨に対して悪い印象は持っていないと、何で判断したのだろうか。

 白い薔薇一輪の意味は『あなたしかいない』だ。葉梨に意味を聞いた時、目が動いた。そうだ、賢い葉梨が意味を忘れるわけがない。忘れたふりをすれば、私が意味を調べると思ったのだろう。

 私の誕生日だと告げた時、葉梨は誕生日の夜に会う男が自分で良いのか確認した。
 当日現れた私は気合いの入った服とヘアメイクだった。そしてハンカチだ。
 私は今日、白地に赤い薔薇のハンカチを使った。それを葉梨は見ていた。だから……。

 ――あの時、葉梨は……。

 ウエイターが来た時、窓際に置いたおしぼりで手を拭いて、元の位置ではなく手元に置いた。あれは符牒だったのかも知れない。
 だとしたら、もし私が承諾していたら白い薔薇では無かったかも知れない。
 もし承諾していたら今頃私は葉梨の部屋で――。

 画面をスクロールしていると、ある言葉に私は釘付けになった。

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