ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ

第41話 タワマンとフラグとたっくんと

 八月二十八日 午前二時四分

 松永さん不在の特別任務は私の警察人生において記憶に残るものとなった。

 いつか笑い話になりますようにと願いながら任務を終えたが、目の前にいる(しな)びたチンパンジーと、母チンパンジーにしがみつく子供のチンパンジーにしか見えない中山さんをどうするか、葉梨と相談中だ。

 葉梨は時間を指定され、ワンボックスカーを運転して指定された場所に私たち三人を送って行く任務を与えられたのだが、私たちには自力で車に乗る気力が残って無かった。

 コインパーキングに停めたワンボックスカーまで私たちは歩いた。頑張った。だが車道から見えないワンボックスカーの影に辿り着いた時に、私たちは崩折れた。
 すぐに葉梨は現れたが、まるでこの世の地獄を見るようなお目々で私たちを見つめていた。

「お疲れ様。私たちはもう無理だから、乗せてくれないかな」
「……はい」

 葉梨は須藤さんと中山さんを先に乗せて、私を助手席に乗せて車を発進させた。

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