ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
「捜査員の再編の件、あと一人を誰にするか、決めかねててさ」

 鬼子母神奈緒のスキップ大作戦に向かう時、私も十一月から隣県の捜査に加わると教えられた。
 松永さん、相澤、本城、飯倉、武村、ポンコツ野川だと聞いていたが、あと一人いるのか。

「岡島か葉梨なんだけど、奈緒ちゃんはどっちが良いと思う?」
「岡島は、葉梨がいないと寂しくて泣きます」
「知らないよ、泣かしとけよ」
「ふふっ」

 葉梨、か。
 直接の仕事ぶりは知らないが、隣県の捜査に関しては岡島の方が適任だと思う。
 私としては葉梨が良い。岡島と毎日顔を合わせるとなると、おそらく物理的に抹殺してしまうだろうから。
 だが仕事だ。ムカつくが、岡島の方が良い。

「岡島が良いのではと思いますが」

 そう言った私の目を、須藤さんは真っ直ぐ見た。
 射抜かれるような厳しい目線だ。なぜだ。

「奈緒ちゃんは、葉梨が良いんじゃないの?」

 口元を緩めた須藤さんは厳しい目線のままで、葉梨が捜査員に加わる手配を既にしてあると言った。
 私と葉梨の関係を知っているという事か。
 だが、私たちにはまだ何も起きていない。

「ふふっ、顔色ひとつ変えず、目も動かない。さすがだね、奈緒ちゃん。頼もしいよ」

 これは褒められているのではない。私と葉梨の間には何もないが、私の心の機微を読み取ったのだ。そして、それをあえて口に出して、反応を見たのだ。
 この人は、やはり油断ならない。

 ――萎びてたチンパンジーのくせに。

 だが私は思った。
 これが松永家の情報網なのだ、と。
 私はもう、松永家に搦め取られているのだ。
 諦めよう。私はそう思った。




 ❏❏❏❏❏

 あとがき

 ここまでご覧いただきありがとうございました。
 次回、最終話です。


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