ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 午後七時二十分

 ターミナル駅の改札口を出た後に私は葉梨の腕を掴んで身を寄せ、小声で「静かな所で二人きりになりたい」と葉梨に言うと、葉梨は動揺した。なぜだろうか。
 私は他人に、『むーちゃん』と発音している姿を聞かれたくないのだ。だってちょっと恥ずかしいし、葉梨だって嫌だろう。

「どこが良いと思う?」

 私はこのターミナル駅で降りた事が無い。繁華街がある事は知っているが、ここの所轄は縁が無いし、何も知らない。葉梨の経歴を考えると知っていると思って聞いたのだ。

「カラオケかな?」
「ああっ! はい!」

 何か他に良い所があったのだろうか。私はカラオケに行きたいわけではない。葉梨と二人で静かに話せる場所を探しているだけだ。

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