ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 松永さんは玲緒奈さんの目の届かない場所の私の監視役でもある。相澤とは官舎が同室で基本的に仕事もずっと一緒だ。そして相澤に対する私の恋心も知っている。

「申し訳ございませんでした。でも、あの……」
「いい。葉梨の件、話せ」

 タバコを灰皿に押し付けた松永さんは岡島に目配せして、岡島は私に言った。

「あの店は松永さんと敦志さんが目を掛けている店なんだよ」
「元々は俺だった。所帯持つ前の大将がこっちの人間でね。で、話は端折るけど、葉梨が気づいたのは女将さんの方の問題だった」

 ――二の腕ムニムニの女将さんが……。

「ただ、このタイミングでその葉梨が気付いてくれたから、問題は……まあ大丈夫。だから良いと言えば良いんだけど、さ」

 そう言って松永さんは私たちの肩越しに視線を向けた。バーテンダーの望月さんが近づいて来る。ドリンクを持って行くタイミングが計れなかったようだ。

 望月さんが私のコースターにロングアイランドアイスティーを置いた時、彼は私の目を見た。私もノンアルコールなのか――。

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