ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
「はい、乾杯」

 各々の手にあるロングアイランドアイスティーは岡島だけがアルコール入りの本物だ。アルコールの強さに岡島は眉根を寄せている。

「で、葉梨はお前に何て、言ってた?」

 私はその問いかけに正直に答えた。岡島だけだったら腹を探りつつ黙っている事もあったと思うが、松永さんでは無理だ。この人は絶対に、騙せない。

「女将さんは葉梨に見覚えがあったようですね」

 これは松永さんもだが、葉梨は捜査員としては致命傷である『目立つ』男だ。背が高くて体格も良い葉梨は記憶に残る。
 入店した葉梨を見た女将さんは、葉梨と目が合った時に目が動いたという。だが葉梨は必死に思い出そうとしたが、その時は思い出せなかった。
 女性は化粧で変わるし、耳の形を覚えようにも髪で見えない場合もあるからだ。

 八年程前、葉梨がまだ所轄の地域課にいた頃、スナックで喧嘩があり臨場した際、状況を聞いたチーママが女将さんだったと葉梨は思い出した。女将さんを巡り男性客二人が争い、それで通報したという。
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