ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 松永さんは三年前の事を言っている。信頼していた先輩とサシ飲みした時に酒に何かを入れられた。そして酩酊状態になった私は、目が覚めるとホテルにいた。
 岡島はその件を知らない。グラスを眺めている。

「お前が早く結婚してくれれば、玲緒奈さんも俺も岡島も、相澤も、楽になれるんだけど」

 ――えっ、岡島も?

 松永さんはタバコに火を付けた。松永さんは私と目を合わせてくれない。なら岡島はと思って横目で見ると、岡島は口元に笑みを浮かべていた。

 望月さんがドリンクを持ってテーブル席へやって来た。またノンアルコールだ――。

「葉梨については、良い。サシで良い」
「えっ、でも……」
「玲緒奈さんから何か言われたか?」
「何かとは?」
「……サシで会った事だろうが、葉梨と」

 玲緒奈さんのお宅訪問はむーちゃんのせいで『笑ってはいけない先輩宅』だった。
 だが葉梨とサシ飲みの件は玲緒奈さんから何も言われていないし、二人で帰る時も何も言わずに見送ってくれた。

「何も、言われていないです」
「なら良いんだろ」
「あの、飲みはやめておいた方が良いですか?」
「好きにしろよ。でもカラオケは……あーもう、好きにしろよ、チッ」

 ――なぜだろうか。舌打ちもされた。

 安価で二人きりになれる静かな場所なのだが、カラオケは個室だからマズいのだろうか。だが防犯カメラはある。
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