ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私が疑問に思っていると、松永さんは言った。

「後輩に同じ曲を三回連続で歌わせて、お前はタンバリン叩いてマラカス振ってましたなんて、そんなクッッッソどうでもいい報告、受けたくねえんだよ」

 ――確かにクッッッソどうでもいい報告だ、それ。

 だが私と葉梨は追跡されていたという事か。全く、気づかなかった。マズいぞ、それは。
 居酒屋の帰り道、スーパーで二リットルの水を二本買って、ダンベル代わりに筋トレしながら帰る姿も見られていたのか。ちょっと、恥ずかしいな。
 それに玲緒菜さんの自宅から走って逃げた時はどうしたのだろうか。他に走っている人はいなかったし、走っている私たちを避けて行く人が数人いただけだ。
 その時の状況を思い出していると、岡島が体を私に向けて言った。

「葉梨をぶっちぎった時は、複数人で追ってたから、なんとか、ね」

 小さく息を漏らした岡島と、呆れた顔をする松永さんに見られている私は、「ごめんなさい」と言って、下を向いた。
 だが葉梨をぶっちぎった件は、元を辿ればむーちゃんとむーちゃんの奥さんのせいだ。むーちゃんの弟は呆れているが、むーちゃんの奥さんの舎弟の私は何も言わないでいた。

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