ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
第10話 幻覚とラストノートと菓子折りと
バーを出て岡島と駅まで歩いている道すがら、私は疑問に思っていた事を聞いた。なぜ今日はいつものチンピラの姿ではないのか、と。だが岡島はその問いに答えなかった。
私は立ち止まり、声をかけると岡島は振り返った。
「なんでよ?」
私の問いに困った顔をした岡島は私の前まで戻って来た。目の前にいる岡島は、「少しは期待したんだよ」と目を伏せて言った。
『奈緒ちゃん、そういうの、俺、本気にしちゃうからやめておきなよ』
――あの時、私を試したのか。
岡島をからかってやろうとした事がバレたのだと思っていた。違ったのか。
「あの、奈緒ちゃんさ、松永さんから言えって言われている事……まだある」
「ん?」
「俺は言いたくない。それだけは、理解して欲しい」
「……うん」
それはきっと、私にとっては都合の悪い事だ。でも岡島は言おうとしている。私と天秤にかけて、松永さんに従おうとしている。
「聞く。言って」
「奈緒ちゃんが先輩から酒に……あの時、俺、店で奈緒ちゃんたちを見てた」
「えっ……」
私は立ち止まり、声をかけると岡島は振り返った。
「なんでよ?」
私の問いに困った顔をした岡島は私の前まで戻って来た。目の前にいる岡島は、「少しは期待したんだよ」と目を伏せて言った。
『奈緒ちゃん、そういうの、俺、本気にしちゃうからやめておきなよ』
――あの時、私を試したのか。
岡島をからかってやろうとした事がバレたのだと思っていた。違ったのか。
「あの、奈緒ちゃんさ、松永さんから言えって言われている事……まだある」
「ん?」
「俺は言いたくない。それだけは、理解して欲しい」
「……うん」
それはきっと、私にとっては都合の悪い事だ。でも岡島は言おうとしている。私と天秤にかけて、松永さんに従おうとしている。
「聞く。言って」
「奈緒ちゃんが先輩から酒に……あの時、俺、店で奈緒ちゃんたちを見てた」
「えっ……」