ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私はあの日、先輩と飲んでいて、トイレから戻って酒を飲んだ後の記憶が無い。
 目が覚めた時に見たものは、シャワーを浴びて髪の毛を拭きながら歩いてくる全裸の松永さんだった。
 目を覚ました私と目が合った松永さんは、「二年ぶり二回目」と言った。
 私は甲子園かな、と思いながら再び目を閉じた。頭がグワングワンしていたから幻覚だと思っていたのだが、本物の全裸の松永さんだったと後で聞いた。

「あのさ、もう、本当に気をつけて欲しい」
「うん……ごめんなさい」

 岡島がそれを見ていたから、私は保護されたんだ。
 松永さんからは、「酔っ払ったお前を見つけたからホテルに連れ込んだ」と言われたが、そんなの嘘だと分かっていた。先輩はどうしたのか聞いたが、答えてくれなかった。
 私は翌日から一週間の有給休暇を強制的に取らされた。ホテルには三日間いて、その後は実家に送り届けられた。休み明けには先輩は既に退職に伴う有給休暇消化に入っていた。どこにいるのか、もう分からなかった。電話も繋がらなかった。多分、生きてるとは思うが、本当の所は分からない。

 ――岡島は私と松永さんがホテルに行った事も知っているのだろうか。

 ホテルにはもう一人、男がいた。
 その男は警察官ではない。松永さんの手駒だった。
 そうか、岡島は先輩の後処理をしたのか。ならば岡島は知らないだろう。

< 56 / 257 >

この作品をシェア

pagetop