ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 私は岡島の顔を見ようと顔を上げると、岡島は目に涙を溜めていた。「先輩が奈緒ちゃんの酒に何か入れるの、俺見てた。奈緒ちゃんが飲む前に、俺、どうにか出来た。でも先輩だから、出来なくて」と言うと、頬に涙が伝った。
 ごめんなさいごめんなさいと謝罪する岡島を見ていたら、私も涙が溢れて来た。

 ――私はずっと、守られて来たのに、誰の事も守っていない。

 岡島は続けた。酩酊状態の私を抱えて車に連れ込もうとしていた先輩ら二人を岡島と松永さんの手駒二人で拘束し、松永さんに連絡を取った。
 松永さんは五分も掛からずに到着して、先輩らを完全に拘束している事を確認すると、岡島を暴行したという。理由はもちろん私が飲む前に何もしなかった事だ。岡島は松永さんに殺されると思ったと言う。

 涙が頬を伝う私たちはハンカチを取り出して、お互いの頬に双方のハンカチを当てた。私は何も考えずにやった事だったが、岡島も同じようにしていて、笑ってしまった。
 二人で泣き笑いながら頬に当てられたハンカチで涙を拭った。

「あの、えっと、直くん」
「えっ……」
「直くん、本当にありがとう」
「うん……」

 私はやらなければならない事がある。
 いつまでも守られていてはいけないと思った。葉梨に仕事を教えて、私も成長しなければならないと思った。
 そのチャンスを、岡島が私に与えてくれたのだから、感謝しないといけない。

「葉梨は任せて。ちゃんとやるから」

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