ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 午後八時二十分

 岡島の息が掛かっているスペインバルに入店する前、葉梨は店長と話をしに一人で店に入った。
 葉梨は岡島に既に連絡していて店には連絡がついていると言っていて、私には岡島から二通、ショートメッセージで数字の羅列が送られて来ていた。普通にテキストで送ればいいものをあえてそうするのは『油断するな』という意味か。

 ――まだ完了していない、と。

 店舗内やスタッフに懸念があるという事か。
 葉梨が戻って来て私を店内に誘おうとするが、私は戸惑っている。大丈夫なのだろうか。だがここまで来たらもう引き返せない。私は覚悟を決めて入店する事にした。

 中に入ると、店長自ら入口から一番遠くの個室に私たちを案内してくれた。
 店長は三十歳前後だろうか。この店のオーナーは四十代で松永敬志さんの息が掛かっている。ショートメッセージで送られた数字の羅列がそう示していた。そのオーナーは私も面識がある。だが岡島はこの店長のみ目を掛けてるという。

 店内は入口付近からずっと壁一面に様々なサイズのコルクボードが貼ってあり、そこに写真が貼られていて、一枚ずつに番号が振られている。私はそれらを眺めながら個室へ向かった。

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