ブランカ/Blanca―30代女性警察官の日常コメディ
 いつの間にか岡島のくだらない話に変わっている。
 後輩の本城昇太がコンビニのサンドウイッチを剥がしたら具が端にしかなくてキレたと。コンビニへカチコミに行こうとしていた所を須藤さんに頭を引っ叩かれたと。

 ――すごく、どうでも、いい。

 私は残りのカステラをラップで包みながら右から左へ聞き流していたが、岡島が昨日起きた事を話し始めた時、私は目眩がした。

 岡島は署で松永さんに会ったという。
 すっ転んだ手駒から報告を受け、岡島の供述と整合性が取れて私に非があると松永さんは判断したが、なぜか岡島は壁ドンされたという。

 松永さんの壁ドンは四つある。
 片手で顔の横に手をつく一般的な壁ドン、両手をつく壁ドン、折り曲げた腕をつく壁ドン、そして――。

「階段降りてる時に髪掴まれてそのまま壁ドンされた」

 ――そっちの壁ドン、か。

「耳のとこ、ちょっと痛い」
「可哀想に」
「あれ、心配してくれてるの?」
「うーん……」

 近々に松永さんとは会う事になっている。
 松永さんは私に四つ目の壁ドンをする事は無いが、非のない岡島がそっちの壁ドンをされたとなると、私も覚悟が必要だと思った。

「じゃあさ、またこの前みたいに頭いい子いい子してくれない?」
「私がしてあげなきゃいけない法的根拠は?」
「ん、新しい返しだね。『バカなの』と『殴るよ』は飽きたの?」
「バカなの?」

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