【SS集】きゅん、集めました
槙野にドキッとしただけなのに、先生まで呼ばれたらはずかしい!
そう思って必死に止めると、離れた槙野はわたしを観察するように見つめて、不意にほほえんだ。
「なるほど。では、“私”にときめいて?光栄です」
「!!」
「ですが、財閥の令嬢たるもの、そうかんたんに本音を明かしてはいけませんよ。かけひきのテクニックをお教えしなければなりませんね」
白い手袋に包まれた手が伸びてきて、わたしの両ほおを包みこむ。
近づいてくる槙野の顔に体温が上がって、ぎゅっと目をつぶり顔をそらすと、「目をそらしてはいけません」とささやく声がした。
「お嬢さま、私の顔を見てください。これから毎日を共にする顔です。決して目をそらさず、じっと見つめてください」
「っ…槙、野…」
「はい、お嬢さま。そんなにかわいらしく ほおを染めてはいけませんよ」
「む、むりよぉ…っ」