ノア様の愛のいじわる
本心だもん。ほんとだもん。
ほおを膨らませて抗議するわたしを見て、野愛は優美に笑う。
「あっそ。じゃあ瑠璃ちゃん、また明日ね」
あっけなく颯爽と帰っていく野愛の後ろ姿。
わたしが『また明日』と返す間もなく、去っていってしまう。
そのせいで、急に隣にだれもいなくなった寂しさをおぼえる。
そうやって余韻を残していく野愛は、……悪い人だ。
なにも言えなかったのが悔しくてムズムズしたため、スマホを取り出してメッセージを打つ。
『また明日! 明日はひとりで帰るから!』
彼に送信すると、数秒経ってすぐに返事が返ってくる。
開くと、そこにはたったの4文字が浮かんでいた。
『逃げすぎ』
なぜかわからないけれど、その簡素な文で心臓が痛くなったのは……野愛には内緒だ。