私に毒しか吐かない婚約者が素直になる魔法薬を飲んだんですけど、何も変わりませんよね?そうですよね!?
なんて思わず頭を抱えた私は、ふと良いことを思い付いた。

「素直に⋯なればいいのよ、強制的に⋯!」
「お嬢様?」

慌てて手紙を書いた相手は魔法アカデミー時代の旧友で。

「アニー、これを至急届けてくれるかしら?」


――なんて、この時はまだ知らなかったのだ。
この時頼んだ『魔法薬』が、想定外の騒動を起こすなんて事をー⋯




「こんなに早く出来るなんて!」

コトリと目の前に置かれたのは少し怪しい紫の小瓶に入れられた液体。
これは私が依頼した『素直になれる薬』だった。

“依頼してすぐ作れるなんて、相変わらず優秀なのね”
なんて思う魔法アカデミー時代の旧友は、その優秀さから現在は王宮魔法師として日夜研究に勤しんでいるという。

「テオドール様も王宮魔法師になれる実力はお持ちだったのに⋯」

何故か彼はアカデミー出身者ならば憧れのその職業には見向きもせず、継げないはずのユースティナ侯爵家で更なる勉学に励んでいたというが。


「お飲み物に一滴お垂らししてください、との事でした。それ以上は効果が出すぎるので必ず一滴だけを、と」
「わかったわ」

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