あの頃言えなかったありがとうを、今なら君に
「盛岡さんと山形さん、いつから付き合ってるんですか?」
「⋯んぐっ!?」
「愛妻弁当ならぬ彼氏弁当かぁ、美味しそうだしいいなぁ~!料理出来る彼氏!」
「ちょ、待⋯っ」
「あ、これ今度提出の見積書です!確認お願いしまぁす」
「待って!確認はするけどこっちの確認もしてっ!!私達付き合ってなんか⋯っ!あ、あぁ⋯」

最後まで聞かずパタンと閉じられる扉にガクリと肩を落とす。


営業成績で争っていた二人なだけに注目も集めていたのか、そのあり得ない噂は瞬く間に社内で広まった。


その結果、上司に呼び出されたかと思ったら『結婚するとどちらかは部署異動になるから、2ヶ月前には教えてね?』なんて言われる始末。


“つかなんっで私だけに言うわけ!?盛岡にも言いなさいよ、私よりあいつに残って欲しいの丸わかりなんですけど!!”

なんてかなり腹立ち⋯

“って違ぁう!!そもそも付き合ってなんかいないのよッ!!”

と頭を抱えた。


私がかなりこの噂に振り回されているというのに、もう一人の当事者である盛岡はしれっとしていて。

「ほら、今日のは自信作」

なんてお弁当を手渡してくる訳で。

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