海みたいな空と嘘をつけない夏
「実は俺、夏菜(かな)の兄ちゃんが好きなんだよね」


 空は、海みたいだ。


「……え?」


 この田舎町には勿体無いほど綺麗で

 掴もうと手を伸ばしても掴めるのはほんの一部

 気を抜くとその一部さえサラサラと手の隙間をすり抜けていってしまう。


 一つ上の幼馴染、(そら)はそういう人だった。


「空が、春樹(はるき)を?」

「うん」


 いま暇?って最初に呼び出したのは私の方だった。

 防波堤に座ってひたすら静かな海を眺めることに疲れて、あんみつ食べたいって言おうとしたら、突然空が穏やかに、穏やかじゃない告白をした。


「……へぇ」


 同性愛。

 最近はそんな珍しい話でもないらしいけど

 まさか自分の幼馴染が、しかも自分の実の兄相手にそんな気持ちを抱いてたなんて。

 加えて春樹は、三日前にさくらちゃんと付き合い始めたばかりだ。


「そうなんだ…」


 逆にそれ以上の感想が出てこない。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop