海みたいな空と嘘をつけない夏
「ビックリ?」


 空が私の反応を試すような流し目を寄越す。


「……まぁ」

「まぁて」


 海風に煽られながら笑う空の黒髪が揺れて、右耳にいくつも付いたピアスが太陽に反射して煌めいた。


「そろそろ帰っかねー」


 軽い身のこなしで立ち上がった空は、


「ん」


 いつものように私に手を差し伸べた。


 何も言わずにそこに手を乗せると、グッと力強く引っ張り上げてくれる。


「…春樹のどこがいいの?」


 パッと手を離して歩き出した空の背中に、素朴な疑問を投げかけた。


「えー?」

「ガサツだし、うるさいし子供だし」

「んー…」


 隣のクラスの舞香ちゃんも、ダンス部の北條先輩も、恋愛は興味ないと言ってた愛ちゃんでさえ、

 空のことが好きだった。

 みんなみんな、今も部屋で白目にいびきかいて寝てるだろうあの残念な兄に敗北したのかと思うと、いたたまれない。


「嘘がつけないとことか…あと、笑顔が可愛い。こう、ニカッて」

「あー」

「それと、晴れ男」

「ふーん…」


 なるほど。どれも私には備わってないものばかりだ。
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