花縁~契約妻は傲慢御曹司に求愛される~
私の実家は都内から電車で一時間半ほどの場所にある。
地元の友人たちは既婚者が多いせいか、母にこれまで何度も見合い話を持ち掛けられていた。
『久喜、今度の連休どこかに行かない?』
『悪い、仕事』
誘っては断られ、恋人らしからぬ生活が続き、結婚話も一向に進展しなかった。
そして三カ月前、唐突に別れを切り出された。
仕事が忙しくすれ違いばかりなのが理由と言われたので、一緒に過ごす時間を増やせるよう努力したいと伝えたが、恋愛感情も元々なかったし潮時だろと告げられ、言葉を失った。
つらかった。
想いあっていると信じていたのは、私だけだったのかと胸が痛んだ。
同時に自分の至らなさを今さらながら考えていた。
口下手で相手への好意を言葉にできていない点を反省し、もう一度交際を申し込もうと決めた矢先、笠戸さんとの交際宣言を耳にした。
『久喜さんと一年くらい前から毎日電話をするようになって、毎週末を一緒に過ごして……告白も彼からで』
同僚に嬉しそうに話す姿に、血の気が引いた。
凛が憤怒の形相で久喜を問い詰めると、私とは別れたのだから浮気ではないと言い切ったらしい。
なにも知らずに勘違いしていたのは私だけだった。
『社内で交際発表してなかったんだし、逢花は恥をかかないだろ。俺は悪くない』
渋る親友から無理やり聞き出した久喜の発言に愕然とした。
そして一カ月前、久喜と結婚が決まり笠戸さんの退職が発表された。
以来、笠戸さんはやたらと私に久喜の話をするようになった。
大方、私が彼の元恋人だと知ったのだろう。
見当違いの牽制だらけの毎日が今日で終わると思えば、送別会で祝福するくらい楽なものだ。
たとえ私がふたりを祝う気持ちにまったくなれなくても。
社会人として、最低限の仕事上の付き合いをするしかない。
そう、思っていたのに。
地元の友人たちは既婚者が多いせいか、母にこれまで何度も見合い話を持ち掛けられていた。
『久喜、今度の連休どこかに行かない?』
『悪い、仕事』
誘っては断られ、恋人らしからぬ生活が続き、結婚話も一向に進展しなかった。
そして三カ月前、唐突に別れを切り出された。
仕事が忙しくすれ違いばかりなのが理由と言われたので、一緒に過ごす時間を増やせるよう努力したいと伝えたが、恋愛感情も元々なかったし潮時だろと告げられ、言葉を失った。
つらかった。
想いあっていると信じていたのは、私だけだったのかと胸が痛んだ。
同時に自分の至らなさを今さらながら考えていた。
口下手で相手への好意を言葉にできていない点を反省し、もう一度交際を申し込もうと決めた矢先、笠戸さんとの交際宣言を耳にした。
『久喜さんと一年くらい前から毎日電話をするようになって、毎週末を一緒に過ごして……告白も彼からで』
同僚に嬉しそうに話す姿に、血の気が引いた。
凛が憤怒の形相で久喜を問い詰めると、私とは別れたのだから浮気ではないと言い切ったらしい。
なにも知らずに勘違いしていたのは私だけだった。
『社内で交際発表してなかったんだし、逢花は恥をかかないだろ。俺は悪くない』
渋る親友から無理やり聞き出した久喜の発言に愕然とした。
そして一カ月前、久喜と結婚が決まり笠戸さんの退職が発表された。
以来、笠戸さんはやたらと私に久喜の話をするようになった。
大方、私が彼の元恋人だと知ったのだろう。
見当違いの牽制だらけの毎日が今日で終わると思えば、送別会で祝福するくらい楽なものだ。
たとえ私がふたりを祝う気持ちにまったくなれなくても。
社会人として、最低限の仕事上の付き合いをするしかない。
そう、思っていたのに。