あしたのあたし
それが、すべての始まり。それから付き合うようになったあたし達は、驚くほどスムーズに関係を築けていった。外見もそうだけど、高槻君は何より優しかった。そこが、あたしが一番惹かれたところかもしれない。

―チン。

思考を停止させる無機質な音…、電子レンジの音だ。

「って、浸ってる場合じゃない! 時間がないんだから早くお弁当箱に盛り付けなきゃ! …熱っ」

熱々のお皿を素手で掴んでしまった。火傷を水で冷やす時間ももったいない。そのまま冷凍食品のおかずをお弁当箱に盛り付けて、ふたを閉めてハンカチで包む。これで何とかお弁当の体裁は整った。

「いってきまーす」

お父さんもお母さんも仕事の都合でほとんど家にいないんだけど、ついくせで無人の家に向かって挨拶をしてしまう。鍵を閉めて学校への道を走り出したところで気がついた。

「あ、あたし朝ご飯食べるの忘れてた」

こんなドジなあたしだけど、高槻君は好きって言ってくれた。思えばあたしはそれが一番嬉しかったのかもしれない。高槻君、待っててね!
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