別れさせ屋に依頼をした私の結末
「今日もそこで!」

「却下。同じとことか、俺がつまんない」

「“つまんない”って……。じゃあ、おでこ! おでこでいい!」

これ以上、変なところにされたりしないよう、慌てて違う場所を伝えたら、キングは「えー」と不満げに顔をゆがめる。

だけど、しばらくするとその表情を変え、「ま、いっか」と諦めてくれた。

ホッと胸をなでおろすと、彼は持っていた私の手首をグイッと引っ張る。

「っ!」

不意に抱きしめられた体。

見上げると、キングは私の前髪を上げて、真剣な眼差しで見つめてくる。

――チュッ

と軽く音を立てて口づけられた。

「……」

これは、これで、恥ずかしい。

けれど、「綺麗」と思うだけだった顔の、目の形や鼻筋、唇の色――そのひとつひとつを、間近でじっくりと眺めてしまう。

「耳まで真っ赤じゃん」

キングは笑みをこぼし、私の反応を面白がる。


……私、どうかしてる。

付き合ってもいない相手にネクタイまで緩められたというのに、身の危険を感じるどころか、その笑顔を「かっこいい」と思ってしまうなんて……。






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