別れさせ屋に依頼をした私の結末
てっきり西館の食堂へ行くものだと思っていたのだけれど、美奈が向かったのは北館の保健室だった。

歩いている間、終始無言だった彼女は、保険の先生がいないことを確認すると、

「この辺に置いてあった気がするけど……」

とつぶやきながら、薬などが置かれている棚の扉を開く。

そうして、のちに手に取ったのは薬局でも市販されている普通の絆創膏。

彼女は箱から1枚取り出して、私のそばに来た。

「ただの虫刺されなんだろうけど、朝からウワサになってるよ」

首に人差し指の先を当てられる。

「ウワサ?」

蚊に刺されていたのだろうか?

かゆみなんてなかったから気づかなかった。

何のウワサが流れているのか気になっていると、美奈は私に絆創膏を手渡してから口を開く。

「“キスマークついてる”って。それで隠したほうがいいよ」

「“キスマーク”? 何それ」

聞きなれない言葉にぽかんとした私は、それがどういうものなのか見るために、壁際に貼られていた鏡板の前に立った。

「これ?」

首の端には小さな赤みがあって、すぐに見つけることができた。

虫刺されのような大きさだけど、触ってみると腫れてはいないし、よく見てみると、それは小さな内出血のようだった。

「これ、虫刺されじゃないかも」
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