クールな君の甘さを知れば【※表紙絵変更しました】
この場所だけは
「…じゃあ、そろそろ戻るわ。古賀は…もう少しいる?」
「う…ん、そうする」
「また迷子になんねぇ?」
「なっ…ならないよ!…たぶん」
「まぁ…大丈夫だろ、多分」
…どうしよう、長谷川くんに無理させてる。
長谷川くんはそうやって、なんでもなかったみたいに笑うけど、でも…。
いや…違う。
さっき、私は笑った。
…泣きながらだけどね。
だってそれが、長谷川くんの望みだって言ってくれたから。
それなら私が傷ついてる暇なんかない。
長谷川くんが普通にしてくれてるから、私も“いつも通り”を頑張るよ。
「ありがとう、長谷川くん」
そう言って笑うと、長谷川くんは心なしかほっとしたように表情を緩めた。
「ん、どーいたしまして。じゃ…今度こそおやすみ」
「うん、おやすみ」
ひらひらと手を振って歩き出した長谷川くんの背中を見送り、もう一度中庭を見渡した。
人気のない静かな夜の空気。
澄んでいて、ひとつ呼吸をする度に肺がキレーになりそう。
「…なーんて、それはさすがにないかぁ」
でも、本当にそんなふうに思うの。
長谷川くんに言ったら、「そうだな」って笑って頷いてくれるかな。
だけど…だけど。