逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
揺れる暖炉の火
「まあ、どうなさったのでございますか、だんな様」
 侍女長が玄関先で目を丸めている。

 馬上のア―ロンは、見知らぬ娘をかかえるようにして帰宅したのだ。

「ああ、今晩この娘を預かる。その準備をしてくれ」
「・・まあ、さようでございますか」

 娘の服は土で汚れていた。かすり傷も負っているようだ。
 侍女長が下女に声をかけ、屋敷が動きだした。

 ソフィーは応接間に通された。
「・・ゆっくりするといい、食事もすぐにできるだろう」
 アーロンが声をかける。

「ありがとうございます。・・感謝の言葉もございません」
 声は掠れていた。しかし作法にのっとって礼をする。
 平民とは思えない仕草だった。

「いや、君を助けたのは俺じゃない。・・あの、白い」
 言いさしてやめた、娘の顔が強張ったからだ。
 白い・・あれがなんであるのか、アーロンにも分からない。
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