逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「王から退職を迫られているのだ、俺がもうすぐ五十になるからな。おまけに半年も前に退職式をやるそうだ」
「・・はぁ」

「退職式は十日後だ。それを過ぎたらおそらく今まで通りの指揮は出来ない。まあ時間の問題だな、それまでに精一杯あがいて・・」
 彼らしくもなくため息をついた。

「ああ、お前は引き続きここにいてくれ。ここで情報をあつめて、それから」
「それから?」

「ここは人手も足りないんだろう? ソフィー嬢の役に立って、そしてもしものときは洞窟を守ってくれ、女と負傷兵ばかりだからな」
「・・! 私が、ですか、一人で?」

 デイズはまだまともに歩けない。

「ああ、やればできる、頑張れよ」
「・・は、はあ」
 げっそりと塩垂れる。

 アーロンはニヤリと笑って、
「大勢の護衛兵をまともに送り込んだら危ないのだ、目立つからな。だからこの間から洞窟の周辺に猟師や農夫が増えているはずだ。めったに姿は見せないだろうがな」
「それはっ、もしかして」

「・・シッ! 声がでかい」
「はい」

 あわてて口を押えた。


          * * * * *

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