逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「しかし、そんな老いを忘れているときがないか? 一瞬なんだがな。そのときは昔の若い自分に戻っているんだ」
「・・ああ、そんなときがあるな。不思議な感覚だよな、あれは」
 シュテルツも感慨深げに言う。

「そうして現実に戻ったら?」
「・・受けるショックが大きいって訳だ。もうどうにもならんのだと悟ってね」
「ああ、確かにな」
 
 二人が目を合わせた。
 またじわりと笑いが浮かぶ。

 と、アーロンがはたと思いついたように、
「・・そうだ、こういうのはないかな」
「どういうのだ?」

「若くなりたいと念じてピョンと跳ぶんだ。そしたら地面に下りたときは若返っているんだ!」
 おまえ・・とあきれて、
「お前は本当にあのアーロン・ハインツか、誰もがあがめる国の英雄の。その発想はまったく・・」

「いいじゃないか、ちょっと言ってみただけだ」
 照れたように頭を掻いている。

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