逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 シュテルツは腕を組んだ。しばらく考えていたが、
「それではアーロンと共に出廷することにしよう」
「はい。・・それでアーロン様はどちらに?」

 さっきから姿が見えないのだ。 
「ああ、今あいつは奥の部屋にいる。準備ができ次第出発するから君らは先に行っていてくれ」
「・・はあ」

 腑に落ちずシュテルツを見る。
 しかし彼はこの国の宰相だ、眼光に押されて敬礼をした。

 
 庭でハインツ家の馬車が整えられている。

 執事らが見送りに出て、シュテルツが乗り込んだ。
 アーロンがいないのに出発するのかと皆が首を傾げた。

 馬車がアーロン邸を出た。
 曲がり角に来たとき、塀の陰からフードを被った男が現れた。
 馬車は停止し、素早く男が乗り込んだ。

 馬車は何事もなかったように出発した。
< 147 / 510 >

この作品をシェア

pagetop