逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 登るにつれて人家がなくなり暗さが深くなる。
 前を行くソフィーを見失いそうだった。

「なんだか狐でも出てきそうだな」
 つぶやいたとたん、暗闇から目鼻口が出た。

 うわっとヴェンが叫び、
「ありがとう」
 その目鼻口がいった。

「ここまで来たら大丈夫よ。だからあなたはもうアーロン様のお屋敷に帰って」

「帰れって、この荷物はどうするんだよ」
 肩には大量の薬袋がある。

「そこに置いていけば大丈夫よ、あとで仲間が取りに来るから」
「・・え、なかま?」

「あ、そうそう、アーロン様によろしく伝えておいてね」

 その声はもう向こうに遠ざかっている。
 まだ道は続いているのに、ふいに脇の茂みに入って行った。
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