逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そして・・。
 物見の塔から白煙が上がった。それは一筋の線を描いて高く登っていく。

 次にアーロンは眼下を向いて、

「今より全員高台に上がれ! 地上と一階にはだれも残るな」

 意味不明のことを言った。
 指示を受けてすべてが階段を駆け上がる。

「い、一体どういうことだ、一階に残るなとは?」
 シュテルツが問うた。

「心配するな、周辺の民にも言ってある。平地に残るな、丘や山へ駆け上っていろと。そこなら水に呑み込まれない」

「み、みずだと? 呑み込まれるだと?」
 訳が分からずオウム返しのように聞いた。


          * * * * *
 
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