逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
珍しい賓客
 グリントール王宮に、珍しい光景が広がっていた。

 隣国マリンドウの王が姿を見せていたのだ。
 西方にあるバッハスと違って、マリンドウは温厚な国でこのグリント―ルとも国交がある。
 そしてマリンドウ王はこの国の王妃の兄でもあった。

 故グリンドラ王が成人したとき、その父王がマリンドウ王と交渉して王妹を妃にもらい受けた。今から七年前のことだった。

 マリンドウ王はバッハスの侵攻を聞いて懸念していた。

 絶えず使いが来てグリンドラ妃と王子の安否を聞いてくる。
 シュテルツら臣下はその心配りに感謝した。これほどまで心を砕いて案じてくれる心根に頭が下がる思いだった。

 幸いにもバッハス軍を撃退することができた。
 マリンドウ王は、それへの祝辞を述べにやって来たのだという。
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