逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「この間だと、いったい何の話だ」
「あの湯殿のときです、あなたは迫って来て問い詰めるようにしたでしょう。私の肩を押さえて、さあ言うよな、と」
 
「・・湯殿、ですか」
 リズが目を丸め、ソフィーははっとして、
「いや、そうじゃなくて、その」

「ああそうだな、あの風呂場では何もなかったが」
 ア―ロンが火種を大きくした。

「もうっ、止めて下さい」
「止めろだって? 言いだしたのはソフィーだろう。君もなかなか開けっぴろげになったものだと」

 リズがあわてて咳払いをする。
「今はエレナの事でございます。相手はラプターという髭の男ではと思うのですが、でもいったい何者なのでしょう」
 その顔もどこか赤くなっている。

「ただのゴロツキではない、バッハスのコインを持っていたなど聞き捨てにできない事だ。北通りの市場を調べさせよう、もしかしてそこにエレナが監禁されているかも知れないからな」

「っ、監禁!」
 ソフィーとリズが叫んだ。


          * * * 
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