逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 マリンドウから新たな使いがやって来た。

 マリンドウ王の体調が急変したのだと。そのため宰相が代理として参加するのだと。

「体調の、急変・・」
 ガイゼルが目を剥いた、先を越されたという顔だ。

「そこまで変わるなら話は別だ。俺はセンダへは行かん。絶対行かんからな」

 そう言うなり、
「あとは政務でなんとかしてくれ。これ以上の関りはご免だ」
 周囲が止めるのも聞かず立ち去った。

 
 代わりにセンダへ行こうという者は皆無だった。
 誰も命が惜しいからだ。

 シュテルツが困惑した。
 なす(すべ)がない、・・ある一点を除いては。

 依頼すれば彼は否とは言わないだろう。
 だが現場は極めて危険なのだ。

 窓を見た。
 北からの強風が吹き付けていた。

 脳裏に、一度だけ見たソフィーという娘が浮かんできた。


          * * * 
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