逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 翌朝もアーロンは帰って来なかった。
「いずれ連絡がございましょう。なにか言って来ればすぐお知らせいたします」
 執事が声をかける。
「ああ、もうすぐレブロン邸に負傷兵が到着する時刻でございますね。ソフィー様はお迎えにいらしたらいかがでしょう」
「・・ええ、そうね」

 レブロン邸ではリズが迎えてくれた。
 あいさつもそこそこにシュテルツの話になる。
 経過はここにも届いていなかった。
「もしも軽傷なら、心配いらないという連絡があると思うのですが・・」
 リズはそう言い、二人に不安が募っていく。


 大型の馬車が何台も到着したのは昼前だった。
 中から次々と負傷兵が出て来る。

 自力で歩ける者が降り立って屋敷を見上げた。
 その荘厳さに息を呑む。

「みんな、よく来たわね」
 出迎えるソフィーに、
「はい、皆さまが大変よくして下さいました」
「あの、お嬢さま、こんなお屋敷に滞在させてもらえるのですか? 我々のような者を」
 彼らはラクレス領の平民の兵士だった。
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