逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 アーロンは親子を天幕に入れた。
「届けろというのはどんな物なのだ」

 母親が包みを出して、
「ラクレス家の家宝と聞いております。ラクレス様のご先代が王様から賜った印章だと」
「それをどうして持っているのだ」

 女は言葉に詰まった、言いにくそうに目を伏せる。
「言えよ、俺が盗んだんだと」
 息子がうそぶいたように答えた。

 母は困ったように思案して、やがて、
「そもそもの始まりは、お屋敷のダン・ラクレス様が行方不明になった事でした。それから執事や家令が辞めていったのです。それにはカライルという商人が絡んでいると聞きました」
「・・ほう」
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