逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ソフィーはレブロン邸から帰って来た。

 髭の大男は今日も庭の隅で待っている。
 いつも通りエレナを呼んでくれというのだろうか。

 しかし男はわらいながら、
「いや、今日はエレナじゃない、ほかの人を呼んで来てもらいたいんだ。最近この屋敷に来た若い女性だ」
「若い、女性?」
 まじまじと男を見た。

「そうだ、名前をソフィー・ラクレスという。あのラクレス領のご令嬢だよ」
「えっ」

「エレナに頼んでも、らちが明かないからな」
 そう言ってまた男はわらった。
 虫唾が走るような嫌なわらいだった。

「悪いようにはしない。ただちょっとそのお嬢さんと懇意にしたくってな。あのエレナという女にも飽きてきた所なんだ」

 ソフィーは棒立ちになった。
 なぜこんな男が自分の名前を知っているのだろう。そして呼び出そうとしているのだろうか。

 その上、あのエレナという女にも飽きたなどと・・。
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